次に、大きな2番の地域の見守り・支えあいについて伺っていきます。

 

 (1)コミュニティ・ソーシャルワーカーの配置について伺います。

 

 現在、地域支えあい活動の推進に関する条例に基づきまして、町会・自治会に高齢者や障害者の名簿を提供し、見守りをお願いしておりますが、この支えあい名簿を受け取って、町会加入者以外の方まで見守っていこうと手挙げをしていただいた町会・自治体はまだ全体の約3分の1です。その3分の1の町会では、個人情報の漏えいに気を遣いながらも、どのように見守りを進めていこうかと日々御努力をいただいていることと思います。また、手を挙げていない町会・自治会の皆さんも、従来どおりの見守り活動をしていただいていると思います。名簿を受け取っている、いないにかかわらず、見守り・支えあいを推進する町会・自治会の皆さんからは、現在どのような声が一番多く寄せられているのでしょうか。お聞かせ願います。

 

○波多江中部すこやか福祉センター副参事(地域支援担当) 見守りや支えあいの活動については、町会・自治会の皆さんの自身の高齢化とともに、活動の担い手不足への不安などの声があると同時に、まち全体の高齢化が進んできたことに改めて気がついたという意見があります。また一方で、見守りの活動などによって、地域の課題が発見できるという意見もございます。

 

○甲田委員 担い手不足、また高齢化が進んでいるということですけれども、私がお聞きした中では、最近、町会が幾ら見守りをやろうとしても、区はそこをどこまでバックアップしてくれるのかが見えないという声が多いと感じます。見守りをやっても、結局、区は何をしてくれるのか。困難な人を地域の中でどう継続的に支援していくのかということです。やはり、見守り・支えあいを推進するならば、異変を発見した後に区がどのように支援の手を差し伸べるかということが信頼感につながってくると思います。私は、その異変をきっかけとして、地域住民とともにその後の支援をしていくことが大事であると考えます。私も地域で多くの御相談を受けますが、多重の問題が絡み合う御家庭の御相談や、近隣から悪質な嫌がらせを受けて悩む方、悪徳リフォーム業者につかまってしまい悩む方など、行政だけで解決が難しい、重たい問題もあります。行政のサービスは縦割りになっているため、一つひとつみずから申請をしなければ、事は進んでいきません。申請をしたとしても、制度の狭間でその人に合った適切なサービスが行政にない。または、実際には制度があるのに、そこまで行き着くのが困難な方もいらっしゃいます。こういう問題を放置しておくと生活困窮者がますます増え、社会保障は幾ら財源があっても足りなくなってしまうと思います。

 

 最近、御相談があったごみ屋敷の問題を例に挙げさせていただきます。近隣の人たちは皆、見るに見かねてどうにかしてほしいと区にも相談をしておりました。衛生面や火災の面などの心配がありますが、孤立している本人に注意をしにくく、何かトラブルが起きるのも怖くて何も言えずに困っています。民生委員さん、警察、保健士さん、区の職員が接触を試みたようですが、なかなか解決ができません。こういった事例は多いと思いますが、原則、中野区ではこういう問題はどこが中心になって、どのように解決をしていくのでしょうか。伺います。

 

○波多江中部すこやか福祉センター副参事(地域支援担当) ごみ屋敷の問題をはじめとするさまざまなこうした困難事例の背景や原因、解決に向けては、事象に即して、どこの部署が機軸になるのかはケース・バイ・ケースというふうに考えております。ただ、すこやか福祉センターや区民活動センターは地域の最前線ということで、最初のインテークの窓口となるということと、区民への窓口については、区民の声をはじめとしてそれぞれのさまざまな分野で一定の相談機能になっているものでございます。

 

○甲田委員 私が言っているのは窓口ではなくて、解決をしていく中心者ということでございます。行政が強制的に何かをする場合には、条例がなければ手出しができないことになります。手出しができない分野が幾ら連携をとっても、なかなか解決ができないこともあると思います。これが制度の狭間だと思っております。区民から見れば、毎日目に触れる困った問題であり、区民の不安を払拭する手だては区として積極的に行うべきです。私は、困った人を排除していく社会は支えあいの社会とは言えないと思います。むしろ、困った人は困っている人だと受けとめ、さまざまな角度から応援して立ち上がらせていく。それが支援であると考えます。

 

 先月、大阪府豊中市の視察に行ってまいりました。先駆的な事業を展開しておりましたので、御紹介をしたいと思います。

 

 大阪府では、平成16年度から、地域福祉計画に基づき、地域における見守り・発見・相談・つなぎの役割を果たすいわゆるコミュニティ・ソーシャルワーカーを配置する事業を社会福祉協議会に委託し、実施をしております。社会福祉士、介護福祉士などの資格の上にさらに研修を重ねたコミュニティ・ソーシャルワーカーは、人口約3、4万人に一人の割合で配置をされております。豊中市の人口は約39万人、高齢化率2割を上回り、人口の入れかわりの激しい点で中野区と似ています。小学校区単位に「なんでも相談窓口」を設けており、そこには相談者本人だけでなく、問題に気付いた周辺の人からも相談が寄せられます。窓口にいる校区福祉員や民生委員さんが解決できない問題は、コミュニティ・ソーシャルワーカーが一緒になり、中心になって、執念を持って、課題解決に取り組んでおります。ごみ屋敷の問題も、ごみ処理リセットプロジェクトを立ち上げ、見事に解決できたばかりか、ごみをためていた高齢者と近隣住民とが話ができるようになり、今後も支え合えるよう、地域の人たちの心をつないでいった好事例があり、2006年からこれまでに約100件ものごみ屋敷を撤去したそうです。8割が高齢者で、このうち約半数が認知症と見られるといいます。本人のプライドや尊厳を大切に、ごみを捨てるか確認をしながら片付け、介護保険サービスやボランティアの援助につなげます。再びごみ屋敷に戻った例はないといいます。これらの取り組みにより、例えば親亡き後の精神障害者の息子の支援、ホームレスの支援、DVで逃げてきた母子の支援、悪質商法で被害に遭ったひとり暮らし高齢者の支援、多重債務の問題、日本の生活文化になじめない外国人の支援など、これまでに地域ボランティアの活動の枠を越えた新たな課題を共有できております。また、引きこもりの若者に対しても、居場所や仕事をつくり出し、パーソナルサポート事業につないで、支え合いだけでなく、就労に結びつけていく流れができています。豊中の市の担当者は、「公平性などの観点から、行政だけでは解決できないことが多かったが、コミュニティ・ソーシャルワーカーが公と民の力をうまく使って、きっちりバックアップしてくれるようになり、市民からの信頼の声が寄せられている」と言われておりました。

 

 そこで伺います。中野区は、都内でも支えあいの最先端を目指す区として、こういった支える側の人を支える仕組み、そして、解決の中心になっていく人材というものが今後必要になってくると思います。困難課題を解決するために、町会、民生委員さん、地域ボランティアの方たち、そして行政とをつなぐ調整役の人です。そういう人の存在が必要と思いますが、いかがお考えでしょうか。御見解を伺います。

 

○波多江中部すこやか福祉センター副参事(地域支援担当) すこやか福祉センターの役割として、地域でのアウトリーチによる保健福祉包括ケアと支えあいの地域づくりを推進しているところでございます。地域の社会資源の活用や顔の見えるコミュニケーション、区民の置かれた生活状況に寄り添った支援のできる職員の育成が重要な課題であると認識しております。今後は、エキスパート職員の認定制度の活用も検討していきたいと存じます。

 

○甲田委員 我が区に合った形で取り組んでいくことが当然望ましいとは思いますが、こういった地域福祉の調整役ともいうべき人材は今後ますます必要になってくると思います。公と民をつなぐとなると、行政の職員ではちょっと難しいのかもしれません。今、厚生労働省が策定中の生活支援戦略の中に、実はこの豊中市の取り組みを参考にして取り入れていこうとしております。我が公明党の山本かなえ参議院議員が7月の参議院特別委員会において取り上げ、このような事業を国としてしっかり制度化していただきたいと訴えました。厚生労働大臣も総理大臣も口をそろえて「参考にしたい」「全国展開できるようにしたい」と答弁しております。早速、豊中市のコミュニティ・ソーシャルワーカーが呼ばれて、特別部会の中で議論をされているようです。生活困窮者が困難な生活から抜け出して、働ける人が健康になって働き、支え合いのきずなが深まる絶好の取り組みだと思います。また、解決の調整役、中心者が、こういう人がいたとしても、今度はその調整役をしっかりサポートできる仕組みがなければ中途半端です。豊中市では、地域福祉計画に基づき、地域福祉ネットワーク会議をコミュニティ・ソーシャルワーカーが主催し、分野を越えた専門職による連携を図ります。また、さらにその上に、ライフセーフティネット総合調整会議という関係行政機関などが集まる会議があり、その地域福祉ネットワーク会議を支援する仕組みをつくっております。課題を共有し、公民協働で、よりきめ細やかな解決の仕組みをつくり出すという、このような体制があってこそ、コミュニティ・ソーシャルワーカーの力量を発揮できると思います。こういった仕組みについても中野区に合った形で今後ぜひ検討してみていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。御見解を伺います。

 

○波多江中部すこやか福祉センター副参事(地域支援担当) 地域支えあい活動の推進のために、これまでも各すこやか福祉センターエリアや各区民活動センターエリアを対象に、社会福祉協議会や地域包括支援センターのスタッフ、民生・児童委員さんを含めた見守り・支えあいのネットワーク会議を開催するなどの取り組みを進めてきております。

 

○甲田委員 応用できそうな仕組みはできているけれども、人の配置は人件費の問題があり、今すぐにできないということであると理解をしております。しかし、都内でも、豊島区では今年からコミュニティ・ソーシャルワーカーを社協に委託をして事業を開始しました。国からのバックアップがあればより可能なものになると思いますので、いずれ将来的にこの制度の国の方向性が明らかになったときには、ぜひ前向きに早い検討をお願いしたいと思いますが、地域支えあい推進室長としてはいかがお考えでしょうか。伺います。

 

○瀬田地域支えあい推進室長 区をはじめ町会・自治会などの自治組織、地域包括支援センター、社会福祉協議会などの関係機関相互におきまして、より有機的、効果的に活動をつなぐ人としてのコーディネーターの役割や機能、そしてまた人材の確保というのは重要な点であると認識してございます。厚生労働省が提示しております生活支援戦略につきましては、その方針決定はまだでございますが、その内容につきましては、御提案のコミュニティ・ソーシャルワーカーなども含めまして、十分に把握に努めていきたいと考えてございます。

 

 区といたしましては、当面は各すこやか福祉センターを中心に、先ほど御答弁申し上げましたが、エキスパート職員の認定制度、こういったものを活用いたしまして、コーディネーター機能などをより発揮し、取り組んでまいりたいと考えてございます。コミュニティ・ソーシャルワークにつきましては、御紹介のありました豊中市社会福祉協議会での事例も含めまして、その働き方や役割ですとか機能などをどのような形で、また、見守り・支えあいネットワークの仕組みの中でより効果的に生かしていけるのか。さらには、社会福祉協議会や民生・児童委員の皆様との連携の仕組みの中でどういった位置付けをして生かしていけるのか。さまざまな視点からの検討が必要であると考えております。

 

○甲田委員 ありがとうございました。ぜひ研究をお願いしたいと思います。

 

○佐野委員長 甲田委員の質疑の途中ですが、3時休憩にここで入りたいと思います。3時15分まで休憩といたします。

 

                  午後2時51分休憩

 

 

 

                  午後3時15分開議

 

○佐野委員長 それでは、委員会を続行いたします。

 

 休憩前に引き続きまして総括質疑を行います。甲田委員、お願いいたします。

 

○甲田委員 引き続き、質問を行わせていただきます。

 

 次に、(2)異変発見の体制について伺います。

 

 現在、中野区で行っている町会・自治会・民生委員さんによる見守りの仕組みですが、異変発見時に区に通報をする連絡先はどこになっておりますか。

 

○波多江中部すこやか福祉センター副参事(地域支援担当) 各すこやか福祉センターに通報いただくことになっております。

 

○甲田委員 それでは、23年度では、年間でどのくらいの通報があったのでしょうか。その内容は主にどんなものでしょうか。

 

○波多江中部すこやか福祉センター副参事(地域支援担当) 23年度につきましては、4すこやか福祉センター全体で53件の異変発見の通報がありました。認知症の進行による徘徊をしている高齢者の発見や、安否確認がとれないということで不安とか心配な状況があるということ。それから、玄関先に新聞がたまっていて安否が心配だというような理由で通報されたケースなどがありました。通報のうち約半数近くは、民生・児童委員さんからの通報でございました。

 

○甲田委員 連絡を受けたときの区の対応はどのようにしておりますか。

 

○波多江中部すこやか福祉センター副参事(地域支援担当) 職員が状況を確認した上で、原則的には相手先を訪問しております。また、緊急・急迫による状況の場合は、居合わせた方による110番通報や119番通報により救急車を要請するケースもあります。しかし、必要と判断した場合には、職員が迅速に訪問をしているということでございます。

 

○甲田委員 また、同様に、そのほかに主に配達をする事業者など169事業者が今提携をしていると聞いておりますが、配達などの仕事をしながら見守りをしていただき、異変があった場合、区へ通報をしていただくことになっていると思いますが、どこに連絡をその方たちはするようになっていて、また、区はどのように対応しているのでしょうか。伺います。

 

○波多江中部すこやか福祉センター副参事(地域支援担当) 区内事業者からの通報は、地域包括支援センターが受け、対応してございます。その中で、公的なサービスが必要な場合や虐待などの疑いがある場合は、迅速に区と連携をし、対応しているということでございます。

 

○甲田委員 ということは、町会、自治会、民生委員さんはすこやか、そして、配達事業者の方などは地域包括支援センターということですけれども、豊中市では、安否確認ホットラインという市役所安否確認窓口の設置を明確にしています。連絡をするのは配達等をしている事業者なども含みますが、直接住民の方々でも可能です。当然、連絡を受け緊急の場合には、必要に応じて警察や消防にも協力を要請して、迅速な安否確認を実施しますが、基本的には市の担当職員がコミュニティ・ソーシャルワーカーと連携をして必ず現場に行くということを徹底しているそうです。そして、連絡をくださった方には、配達中などの場合、その場で時間をとらせないようにして、後ほどしっかりとどのように対処したかということを、個人情報に触れない範囲で報告をした上で、その後の支援に結びつけているそうです。協力事業者は約500件の事業所、お店などがあるそうですが、やはり市民からの信頼につながり、協力店舗・事業所が増えているのではないでしょうか。現在、中野区も見守りの協力員を増やしていこうというお考えはありますか。

 

○波多江中部すこやか福祉センター副参事(地域支援担当) 何らかの見守り支援の担い手については、地域の中に増やしていくことは必要であると考えております。

 

○甲田委員 町会・自治会の皆さんからは、高齢化が進んでいる中、見守りを一生懸命にやっているが限界があるという声も寄せられています。町会・自治会にばかり頼らず、見守り協力員を増やすため、もっと広く区民や事業所に協力員の要請を呼びかけていくべきです。我が会派では、たびたびこのことを要望してきました。私も、平成23年第3回定例会で具体的な提案もしまして、区は強化していくと具体的に答弁をされておりましたが、町会・自治会以外の見守り協力者がその後増えているように思えません。例えば、もっと多くの事業者や商店の方などに声をかけて、協力員さんを増やし、町会・自治会に御紹介をして、可能であれば見守りについては一緒にやっていただくことでもよいと思います。お互いに知恵を出し合っていくことで、より重層的な見守り・支えあいが進むのではないでしょうか。通報の連絡窓口を一本化するなどして、わかりやすくすべきではないでしょうか。また、報告をくださった方に対して丁寧にフォローする体制をつくりつつ、支える側を増やす具体的な行動を起こしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

 

○波多江中部すこやか福祉センター副参事(地域支援担当) 現在、各すこやか福祉センター、地域包括支援センター、障害者相談事業所内において、異変発見時の体制をとっております。それぞれの窓口の役割や機能をわかりやすくPRするなど、通報する方にとって戸惑いや不安のないように対応していきたいと考えております。事業者や一般区民からの通報の統合につきましては、執行方法、経費、庁内各分野との連携の仕組みなどさまざまな課題もあります。今後、検討を進めてまいりたいと思います。

 

○甲田委員 ありがとうございます。見守り協力員を増やすということについては、区長も大事な施策の一つとして進められていらっしゃることと思いますので、ここで区長の御見解もお伺いしたいと思います。

 

○田中区長 見守りをしていただける協力者を増やしていくということは、大変重要なことだというふうに思っております。通報先につきましても、包括とか、それから障害者支援事業所が対応するという、このことはそれはそれでいいと思いますけれども、全体の対応のレベルをきちんと合わせるだとか、経過を記録するだとか、経過をフォローするだとかというようなことを考えますと、やはり一本の統一した窓口があって、だけれども、専門的なところに通報したい人は専門的なところに通報するという、そういう基本的な考え方によって整理・統合をしていくべきなのではないかというふうに私は考えておりますので、その方向で検討したいと思います。

 

○甲田委員 いずれにしても、協力してくださる皆様が、見守りをした気付きを区につなげてよかったと信頼できるような仕組みを構築していただきたいと思います。区の積極的な姿勢を感じてこそ、区民もやりがいを持つことができ、地域での独自の支えあい活動もさらに活性化するものと強く思います。今後の取り組みに期待して、この項の質問を終わります。

 

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