次に、2番、就労困難者の就労支援について伺います。

 (1)生活保護受給者の就労支援について。現在の生活保護制度は、60年間ほとんど変わっていない制度と言われております。資産があれば使い切り、何もなくなった状態になって初めて住宅の家賃を全額補助し、生活費を出す。そこまでは金銭面では全く面倒を見られない。条件が合えば丸抱えの保護という支援しかありません。中間支援のない、1かゼロの支援しかないと言えます。ですので、一度保護になった人がこの制度から脱却するのは大変なことです。それゆえ、受給者は仕事もしないでのんびりしているなどと言われてしまいがちで、そのような声もあり、ことしから生活保護法の改正により、給付の切り下げが行われましたが、制度疲労を起こしていると言われるこの制度の改善には全く至っていないと言えます。

 中野区の生活保護分野事務室内に23年度、平成24年2月からハローワークの職員が常駐して、中野就職サポートを行っております。24年度、この施策によって就職ができた受給者の人数を教えてください。

○伊藤健康福祉部副参事(生活援護担当) 中野就職サポート事業は、受給者のほかに住宅手当、児童扶養手当などの受給者も対象としておりますが、受給者に限りますと、支援者数は247人、就労決定者数は121人でございました。

○甲田委員 生活保護受給者の内訳は、高齢者、障害、母子、家族の傷害、そして、このどれにも当てはまらないその他世帯と分類されます。なかなか就労が難しい高齢者、母子、障害などに比べて、その他世帯は働ける年齢であり、障害者というわけでもない人たちです。就労による保護からの脱却ができれば、当然ながらこの人たちが税金を支払う側に回ってくれます。中野区ではその他世帯、いわゆる働ける能力のある方は現在何人ですか。

○内川委員長 委員会を休憩します。

                  午後1時19分休憩



                  午後1時19分開議

○内川委員長 委員会を再開します。

○伊藤健康福祉部副参事(生活援護担当) 失礼しました。平成24年度のその他世帯数は、年間平均で1,152人でございます。

○甲田委員 1,152人ということで。この、その他世帯に対する就労意欲を喚起する事業が今後の喫緊の課題と思われますが、先ほども言いました川崎市では、その他世帯を保護から脱却するため、先進的な取り組みを行っております。このことは第2回定例会の一般質問で申し上げましたが、今回、川崎市に行ってもう少し調べてまいりましたので、紹介したいと思います。

 川崎市でも人口約143万人中、生活保護受給者は約3万5,000人、一般会計約6,000億円ですが、その約1割の600億円が生活保護費に流れております。その他世帯などの4,500人を就労支援の対象とし、昨年より新たな就労意欲喚起事業や求人開拓及び雇用の創出事業に自立支援室を中心に取り組んでいます。ただし、従来のハローワークを活用した事業では、長年生活保護受給をされてきた方の就労支援としてはあまり向かないと思ったとのことでした。それは、ハローワークを通じての就職の場合、本人たちが望まないこともあり、受給者であることをオープンにしない場合があり、そうすると、結局職場でつまずくことが多くなり、定着しないなどの問題点がありました。その他世帯のボリュームゾーンは40代、50代の単身男性ですので、一般にこれまでの人生に失敗経験があったり、1人で誰も相談できる人がいなく、家に引きこもりがちという人が多いようです。諦め感も強く、精神疾患を患っている場合も多い。そのような人がすぐに普通に働くというのは難しい面があるということです。

 川崎市の今回の特徴的な取り組みとして、一つは民間企業に求人開拓と就労意欲喚起事業を委託しております。20名程度を同時に一定期間採用してもらい、グループワーク研修を行います。そこで行うのは、仕事というより仲間づくりやコミュニケーション力の向上、お互いに励まし合う中で就労への意欲を高めていく事業です。人間、働かないでいると、どんどん負のスパイラルで心も体も健康も害してしまう。1人ではなかなか決意も継続できにくく、励まし合える仲間ができてこそ、生きる意欲、働く意欲が向上します。そういったことを行政が行うのは本当は違うのかもしれませんが、血縁、地縁が切れた状態でいる人たちに人との縁をつくらせ、目的を持った集合体とさせることに意味があり、必要なことではないでしょうか。1年近くやってみた結果、参加者は皆、この研修で表情がとても明るくなったそうです。自立に向かって前向きになることができ、就職した後も励まし合える友人ができたと喜んでいる人もいるとのことです。

 中野区も就労意欲喚起のためには、先ほどもありましたとおり、本当にいろいろと手だてをされていることと思いますが、こういった就労意欲喚起事業についても実施してみてはどうかと思いますが、いかがでしょうか、伺います。

○伊藤健康福祉部副参事(生活援護担当) 区においても、現在ハローワークと取り組みをしております。なお、またそのハローワークの就労支援になかなか乗りにくい難しい方につきましては、39歳以下の方につきましては、若年層支援と申しまして、経験のある、また資格も持っている就労支援員が個別に丁寧な就労支援を行っているところでございます。その中で意欲を喚起できるようにという取り組みはしているところでございます。

○甲田委員 ただし、川崎市ではこれだけでは足りないということで、もう一つ大きな事業をやっています。川崎市いわく、就労支援には大事なことが二つあり、一つはこういった就労の意欲を喚起していくことや求人の開拓であるが、もう一つは、マッチング及び雇用の創出だと言います。これができていないと、結局、就職してもすぐやめてしまい、継続できないとのことです。そこで、マッチングを市の職員がやるわけにもいかないので、また別のある企業にお願いをしました。新聞報道もされており、これも第2回定例会でも触れさせていただきましたが、詳しく紹介しますと、川崎市とこの企業が結んでいる協定は、未知識、未経験の人を採用して、3カ月なり6カ月の時給制アルバイト期間の後に必ず正社員で雇用するというものです。正社員になると、月額16万9,000円から19万9,000円が支払われます。基本はその他世帯ですが、もし障害者の場合には別枠で障害者総合支援法にのっとって、同企業のグループ内にある就労移行支援事業所にて受け入れが可能です。まだ始まったばかりのため、8月時点では13名の採用とのことでした。1年間で100人の採用を見込んでいるとのことです。

 その他、この企業は知的・身体・精神障害、引きこもりなど、あらゆる困難状態の人たちをたくさん雇用して大きくなってきた会社ですので、そういう人たちを扱うノウハウを持っています。3カ月の研修期間ではそのノウハウを生かし、ビジネスマナーなどではなく、まず「楽しい、仲間ができる、会社が好きになる」をテーマとした研修を行ってもらっているそうです。担当者いわく、これまでいろいろと試行錯誤して就労支援をやってきたが、仲間ができずに続かないケースがほとんどだった。会社に愛着を持てるような研修にするよう依頼をしているとのことでした。それを受けて研修ができ、その後、本人がやる気さえあれば必ず雇用してもらえるのがこの会社だったので、何度も確認をしながら、最終的にこの会社をパートナーに選んだと言われておりました。

 川崎市は生活保護受給者に焦点を当てて、このような思い切った施策を実施していました。中野区も川崎市の動向に注視し、このような取り組みを取り入れてみてはいかがでしょうか。御見解を伺います。

○伊藤健康福祉部副参事(生活援護担当) 川崎市の雇用創出の取り組みは、契約事業者が自社に職員として雇い入れるというような大変興味深い取り組みであるというふうに注目しているところでございます。雇用の創出につきましては、求人開拓を行ってのマッチングなどを行う事業が多く他自治体で行われておりますので、そのような手法も含めまして、新たな就労支援策について総合的に検討してまいりたいというふうに考えております。

○甲田委員 ありがとうございました。今後の生活困窮者自立支援法の対策の中にも就労支援事業がありますので、そういった中で考えていただければと思います。ありがとうございました。

 (2)その他で、次に、ひとり親の就労支援について伺います。まず、ひとり親の定義を教えていただけますでしょうか。

○黒田子ども教育部副参事(子育て支援担当) ひとり親の定義でございますが、母子及び寡婦福祉法第6条に規定されております。6項ございまして、配偶者と死別、離別もしくは生死が明らかでない状態になった方、配偶者から遺棄されている方、配偶者が長期間海外にいる。また、配偶者が拘禁されていて扶養を受けられない場合、配偶者が精神または身体障害者のために長時間働くことができない場合、あと、結婚によらないで母になった方のいずれかに該当した場合を言うというふうに規定されております。

○甲田委員 それらひとり親の世帯は中野区に何世帯ありますでしょうか、伺います。

○黒田子ども教育部副参事(子育て支援担当) 平成25年4月現在、3,410世帯でございます。

○甲田委員 次に、ひとり親といっても、母子、父子、シングルマザー、未婚の母があるということですが、中野区において、それぞれ何世帯か掌握はしているのでしょうか、伺います。

○黒田子ども教育部副参事(子育て支援担当) まず母子世帯でございますが、2,964世帯ございます。父子世帯は446世帯。そのうち未婚世帯でございますが、これは児童扶養手当の受給者世帯に限ってという数字でございますけれども、210世帯ございます。

○甲田委員 ひとり親で乳幼児がいる場合、就職活動をしようと思っていても、子どもを預ける場所がない、子どもを預けないと就職活動すらできないということがあります。認可保育園は働き先が決まっている人が優先の仕組みです。本来はひとり親こそ安心して子どもを預け、就職活動ができる支援も必要であると思います。私が相談を受けた方はこういった状況で、仕方なく、お姉さんが経営していた飲食店の手伝いをしながら2歳の子どもを一日中厨房の中で遊ばせながら、しばらく大変な思いをしておりました。この場合、見ながら就労できているとみなされ、認可保育園の点数はかなり低く、仕方なく認可外保育園に無理をして子どもを預け、数カ月後にようやくアルバイトの仕事を決めることができました。こういったケースに対応できるものも含め、何か就労の支援策があればと思いました。

 そこで伺います。ひとり親の就労支援策にはどんなものがあるのでしょうか。

○黒田子ども教育部副参事(子育て支援担当) ひとり親の就労支援策でございますが、まず児童扶養手当の受給者には、母子生活支援員とハローワークが協力しまして就労支援を行うものや、ほかに、ひとり親家庭のための自立支援教育訓練給付や高等技能訓練の促進費などの支給がございます。

○甲田委員 今言いました、子どもを預けるような支援というものはないんでしょうか。

○黒田子ども教育部副参事(子育て支援担当) ひとり親に限ったものではございませんが、一時保育といったようなものがございまして、月に5日間の限度がございますけれども、そういったものを利用して求職活動を行っていただくことは可能であると思います。

○甲田委員 一時保育に保護者が求職活動をする場合にも預けられる制度があるということですが、保育園の入園希望申し込みの際に、就職活動中の保護者がいた場合、そのような案内も積極的にすべきだと思います。現在は認可保育園の入園が難しい理由だけを説明され、それならばどうしたらよいのかというアドバイスについては不十分な部分もあるのではないかと思います。そういったことも今後は保育コーディネーターや保育コンシェルジュなどの必要性があるとして声を上げておきたいと思います。

 これに付随して、認可保育園の基準が現在は多様な働き方に対応していないという問題があります。今の認可保育園の入園基準の指数は、フルに勤務する方優先で点数が高くなっております。パート勤務などの短時間労働しかできない。それでも家計のために働かなければならない場合もあり、そのような人が認可に入れず、認可外を選択せざるを得ないという問題が生じています。そういった保護者でも認可保育園に子どもを入園させることのできる仕組みも必要です。今後、子育て会議の中で論じられていく点ではあると思いますが、多様な働き方に対する問題として、区はこの課題をどう認識されているのか、また、今後の会議の論点としてきちんと検討をしていただけるのか、伺います。

○古川子ども教育部副参事(保育園・幼稚園担当) 多様な働き方に対応するというところでございますが、子ども・子育て支援新制度におきましては、親のフルタイム就労を想定した保育標準時間利用といったものと、あと、パートタイム就労を想定いたしました保育短時間利用という2区分で保育の必要量を認定することが検討されておりまして、これに沿った入園基準を設けることも今後必要になってくるというふうに認識しておるものでございます。また、こういった制度の詳細につきましては、現在、国も検討を進めているところでございまして、その状況を踏まえまして、今後、新制度で募集が始まるまでには適切に対応を図ってまいりたいというふうに考えてございます。

○甲田委員 ありがとうございます。中野区内のニーズをきちんと把握していただき、検討をお願いしたいと思います。

 この項の最後に、父子家庭の就労支援について伺います。先ほど、中野区の父子家庭の世帯数は446世帯とお聞きいたしました。母子世帯のほうが圧倒的に多いとはいえ、把握しているだけでこれだけの世帯が父子世帯になっているということは、非常に多いと感じます。東日本大震災においても、父親または母親を亡くした子どもの数が1,482人、うち父子家庭は600人にも上ると新聞報道で伺っております。突然、家や職を失い、家族を失った家庭では、日々どれだけの困難が続いているか。ましてや、幼くして母親を失った子どもを抱えて、仕事をしながら父親が育てていかなければならないということは、想像を絶する苦労があると思います。こういった家庭が意外に多く存在することを知らねばならないと思います。

 ひとり親世帯は子どもたちの状況に合わせた働き方を緊急的に求められます。保育園への送り迎え、子どものけがや病気、学校行事など、職場を休まざるを得ない、早退する、当然のことです。しかし、男性は現実はなかなか休むことができません。日本社会において、父親たちがどのように追い詰められたとしても、要支援者と認められない現実が存在すると、全国父子家庭支援連絡会の理事が言われておりました。実際には母子家庭と同じか、それ以上に困難の多い父子家庭に対する支援が必要です。しかし、これまで父子世帯に対する行政支援サービスは皆無に等しい状態でした。

 公明党は昨年、国に対し、全国の多くの地方議会から父子家庭への支援拡充を求める意見書を提出しました。中野区議会においても、24年第1回定例会にて全会一致で採択していただきました。その中で求めていた就労支援策は早くも国で拡充がなされ、母子家庭だけでなく、父子家庭にも支援ができるようになりました。そこで、この支援策について御説明をいただきたいと思います。また、現在の利用実績はいかがでしょうか。

○黒田子ども教育部副参事(子育て支援担当) 平成25年、今年度の4月から意見書を踏まえまして、自立支援教育訓練や高等技能訓練の促進費につきまして、母子家庭の対象を父子家庭にも拡大したところでございます。こちらのほうはいろいろ、例えばヘルパーの資格を取るとか、そういったときに講座や学校に行っていただく際に、生活費や教材費について給付ができるというものになってございます。

 現在のところですが、父子家庭の方は実績はございません。

○甲田委員 やはり、周知される機会がまだまだ少ないのではないかとも考えられます。父子家庭の実態を把握することが必要ではないでしょうか。さらに、地域にあまり接点のない父親への支援の拡充の一歩として、相談体制の確立が必要ではないでしょうか。御見解を伺います。

○黒田子ども教育部副参事(子育て支援担当) 父子家庭の方は児童扶養手当の現況届等の折に、区役所の3階の子ども総合相談窓口にもよくお見えになります。そういった際にさまざまなお話を聞きまして、サービスの情報提供も行っているところでございます。そういったことから、今現在、父子家庭の実態調査等を行うことは考えておりません。

○甲田委員 まず、一歩踏み出すということが大きなことになりますので、体制の整備をどうかよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

 

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