次に、4番、地域の見守り・支えあいについて。
高齢者の孤独死の問題、孤立の問題は深刻さを増し、中野区内でも年間200人を超える人が、誰にもみとられずに自宅で孤独死をしているという現実があります。また、血縁や地縁のないお年寄りが孤立し、不安な思いを抱えて過ごしている場合が多いと感じます。そのため、地域の見守り・支えあいを推進することは年々ますます重要になってきています。中野区の地域支えあい活動の推進に関する条例は、全国にその名はとどろいておりますが、中身はまだまだ充実していかなければならないと私は思います。現場では今もなお、町会に名簿を渡すことだけが見守りのように思われているという感が否めず、地域の見守りを推進しようという人の裾野はあまり広がったとは言えません。地域の見守りは町会・自治会に名簿を渡してやらせることがメーンではないはずですが、やはりまちの人たちからは、区は支えあいを推進すると言いながら、名簿を渡して町会にやらせるというだけで、区がどこまでバックアップしてくれるのかが見えないという話をいまだに耳にするのは残念なことだと思います。
地域支えあい条例には基本理念に、区が主体的に推進を図るとなっております。しかし、現状では、まちの人たちからはそのようなふうには思われていないというのが実態ではないでしょうか。区の見解をお伺いいたします。
○朝井地域支えあい推進室副参事(地域活動推進担当) 区は支えあい活動を進めていく体制をつくるために、すこやか福祉センターと区民活動センターを整備いたしました。すこやか福祉センターでは、見守り・支えあいを推進する責任を果たすために、地域での見守り活動を行っている方からの異変発見通報を24時間受け付ける体制を整備しています。また、すこやか福祉センターと区民活動センターに配置をされた職員が地域で訪問活動を実施し、区みずからも地域の実態把握に努めています。これらの区の取り組みによりまして、地域で支えあい活動をしている区民の皆さんが安心して活動できるような体制をつくっているところであり、地域における支えあいの機運も少しずつ高まってきていると認識しています。
○甲田委員 現在、区民活動センターの職員が各センターに2名ずつ配置されておりますが、日ごろどんな仕事をしているのでしょうか。支えあい活動についての仕事を具体的に教えてください。
○朝井地域支えあい推進室副参事(地域活動推進担当) 区民活動センターの職員は町会・自治会や民生委員の会議などに参加しまして、それらを通じた情報交換などにより、地域の課題を把握するとともに、町会などからさまざまな相談を受け、解決に向けた取り組みをしています。また、職員として、地域の中の支援の必要な方を訪問し、生活上お困りのことはないかなどをお聞きしています。今年度は日中独居の高齢者の生活実態についても把握するために、80歳以上のおひとり暮らしではない高齢者を訪問しています。さらに、地域でさまざまな活動者が情報交換を行う支えあいネットワーク会議にも参加し、地域の支えあい活動が進むように事例の紹介なども行っております。
○甲田委員 今、高齢者の訪問調査をしているということですが、目的を伺いたいと思います。例えば、私が先日視察に行きました群馬県太田市では、孤独死の増加を受けて、全庁挙げて見守り隊を結成しました。全高齢者を回った上で、リスクの高い見守りが必要な人、ひとり暮らし高齢者のうち約1割に当たる約450人程度を絞り込み、全75課から2人ずつの市職員の見守り隊が月2回、第1週と第3週に見守りのための訪問をしておりました。第2週は民生委員さん、第4週はふれあい相談員という行政管理公社の職員が訪問をしております。訪問後、見守り隊は報告書に安否、健康、生活、心、その他気づいたことを簡単に書き込んでおります。
中野区におけるこの高齢者訪問業務については、どんなことを目的にしているのでしょうか。
○朝井地域支えあい推進室副参事(地域活動推進担当) 区の職員の行っている高齢者調査は、区として地域の高齢者の実態を把握することを目標にしています。訪問活動などで発見された問題点に関しましては、必要なサービスにつなげたり、地域の支援を必要とする方が安心して生活できるようなさまざまな仕組みの考案ですとか、いろいろなものに役立てていくつもりでおります。また、職員が訪問することで区民の生活実態を現場で肌で感じることができ、支えあい活動全体を進めていく仕事をする上でも大変有意義なことであるというふうに考えております。
○甲田委員 実態把握のためということですが、何の実態把握なのでしょうか。職員は言われたとおりに懸命に回ってくださっていると思いますが、全て職員が回り、把握することは不可能です。確かに、肌で感じることは大切です。何かあったらと相談が来るのを待っているのではなくて、みずから訪問し、肌で感じることで課題の急所がどこにあるのかをつかむことができるのだと思います。それはそれで有意義だと思いますが、区としては何のために職員に高齢者訪問をさせ、何のために現場に人を置いているのでしょうか、伺います。
○朝井地域支えあい推進室副参事(地域活動推進担当) 高齢者訪問は、区として区民の生活実態を把握するために実施をしているものです。地域の支えあい推進における区の役割は、地域で発生するさまざまな課題に対して最終的な責任を持って解決し、セーフティーネットの機能を果たしていくことであると考えています。そのために職員が地域を回り、町会・自治会の方や民生児童委員の方々をはじめとする関係者と連携を深め、異変を発見したとき、また課題を発見したときなどに区の職員に相談していただけるように、信頼関係を築いていくことが大切だと考えております。そのため、15の区民活動センターの現場に職員を配置し、地域の中で相談を受けられる体制をつくっているところでございます。
○甲田委員 そのように責任を持って信頼関係を築くためにとの思いで高齢者訪問調査活動もされていると伺い、すばらしいことだと思います。しかし、それがまだ区民の目にはそのように映っていないのではないかと思います。
2年前に視察をした北九州のいのちをつなぐネットワーク事業でも、担当係長16人を各地域に配置し、この職員の役割はとにかく地域に出ることで、見つける、つなげる、見守るの三つしかないということでした。孤立しがちな人を見つけ、把握した人の家庭訪問を通し、各人の状況に応じたサービスにつなげ、近隣住民につなげながらその人を見守るネットワークをつくっていくというきめ細かい職務です。地域の情報が全てのため、民生委員さんとの連携を小まめにとって動いているということです。その結果、地域で信頼され、どんなことでも相談されるようになったとのことでした。係長クラスでないとできない大変なお仕事でもあると思いますが、懸命に動く姿に感銘を受けました。やはり、地域で顔が見えないと意味がないと思います。
中野区でも職員が訪問活動、支えあい活動をしているのであれば、もっと見えるように、このように回っているんですよという周知をしてはどうでしょうか。その際、区として一体感を持ち、支えあい活動を一緒に推進していただける地域の皆さんの下支えをしていくという姿勢がわかるように周知することが必要ではないでしょうか、伺います。
○朝井地域支えあい推進室副参事(地域活動推進担当) 区の職員が地域の実態把握を行って課題の発見に努めていることは区民の方々にも理解されることも大事であるかというふうにも思います。区民活動センター職員が地域における支えあいの推進にしっかりと取り組んでいくとともに、高齢者訪問の際に区民活動センターの活動を知っていただくことや、また、地区町会連合会、地区の民生児童委員協議会などにおいても、区民活動センターの役割を御説明するなどにより、広く区民に理解をしていただけるようPRをしていきたいと思っております。
○甲田委員 支えあいには人間関係が一番です。会議やイベントへの参加で話をしただけでは、人の心は本当に開くものではありません。支え手となる重要な方との人間関係、信頼関係を築くことが大事です。常に最前線にいらっしゃる地域のリーダーが何を考え、どこを支援してほしいのかを明確にキャッチしていけば、おのずとしっかりとしたバックアップの仕方も見えると思います。
そこで提案です。職についたらすぐに、まずは一番大事な町会長さんや民生委員さんを回り、顔と名前を覚え、話をすることに力点を置いてはいかがでしょうか。何もなくても定期的に御用聞きに回ることで、区に対する疑念をある程度払拭することができると思いますが、いかがお考えでしょうか。
○朝井地域支えあい推進室副参事(地域活動推進担当) 信頼関係を築き、連携を進める上で、町会長の方、民生委員の方との関係を深めることは欠かせないというふうに考えております。地区町会連合会などの町会長がお集まりになる場、民生委員などの会議にも出席し、積極的に情報提供をしているところではございますが、日常的にも情報交換が行えるような信頼関係を築くことはまず必要であり、また、地域が直面している問題をしっかりと捉え、ともに解決していく姿勢を持つことが大事であると考えております。このような役割や仕事への姿勢について、御指摘のとおり、配属後すぐに確実に身につけていくことは必要であり、研修の充実などを進めていきたいと考えております。
○甲田委員 ありがとうございます。1対1の雑談の中でも信頼関係が築けると思いますので、定期的な訪問をお願いしたいと思います。
相談を受けるときには、できることとできないことをより分けず、できる限り相手に寄り添っていくことが肝要であると、私は常々自分に言い聞かせています。それは行政も同じであると思います。行政のサービスだけでは解決できない問題は地域にたくさんあると思いますが、それを放っておくのでは支えあいにはならないし、支えあい活動のバックアップにもならないと思います。
では、どのようにするかというときに、例えば社会福祉協議会や民間の事業者、有識者などにつないだり、協力を仰いだりすることもあると思います。そこで地域の物的・人的資源については積極的に把握、収集をしていらっしゃると思いますが、支えあいに役立つものや、よく聞かれることなど、ニーズの高いものに関しては地域へのわかりやすい情報発信などをしてはどうかと思いますが、いかがでしょうか。
○朝井地域支えあい推進室副参事(地域活動推進担当) 現在も、区の職員は地域資源の把握に努めまして、それを有効に活用するために情報の整理をしているところでございます。こういった情報を常に最新のものとして更新していくとともに、区民に必要な情報は職員が高齢者などを訪問する機会を利用するなど、確実に伝わるようにしていくことが大切だと考えております。これまでも職員が高齢者を訪問する中で、そのニーズをつかみ、社会福祉協議会の高齢者困りごと支援事業のチラシを訪問時にお配りするなどした事例もございます。さまざまな地域資源の情報発信に今後も努めてまいりたいと考えております。
○甲田委員 そういうことが非常に大事だと思います。実際に訪問しているからニーズが見えた一例だと思います。そういった情報発信はどんどんやっていただきたいと思います。高齢者困りごと支援事業や地域包括への相談等、どこに電話していいのかわからない、事業すら知らないという高齢者はたくさんおります。区の職員みずからが、今、皆さんが一番困っていることはどんなことかという現場のニーズをつかみ、地域の方々から、来てくれた、うれしい、ありがたいと思われ、区がここまでやってくれるのなら、私たちも頑張ろうと思ってもらえるような、主体的、積極的な推進をぜひぜひお願いしたいと思います。ありがとうございました。