11月4日、子ども文教委員会が開催されました
 
 今回の委員会での報告はたった1件。
 新たな中野区基本計画に紐付けされる、「中野区区有施設再整備計画(2021-2030)」の(案)が取れた、つまり計画ができました、という報告でした。
 この計画が出されていろいろ思うことはありますが、大きく2つのことを懸案事項として注力してきました。
 
 
懸案事項その1・生活保護課が新庁舎の外に出されることになっていた件
 
 今回、計画の案が取れる段となっての主な変更点は、新庁舎の件です。まずはこの件をご報告します。
生活保護課だけが3年後にできる新庁舎の外に出される、という誰がどう考えてもおかしな案だったのですが、これは取り下げられました。
 昨年秋にこの件が突如報告されてより、私達はこれはダメだと様々な角度から区に箴言をしてきました。議会では多くの議員も疑義を投げ掛けていました。
 しかし区は、ずっと固持し続けていたのですが、パブリック・コメント等が行われ、区民からも声があがり、それがネットニュースなどに流れたところで、ようやく軌道修正。
 またもや無駄な時間とお金を使って、概ね元のサヤに戻るという迷走でした。
 新庁舎に入るとされていた社会福祉協議会は一部しか入らず元のスマイル中野(社会福祉会館)にそのまま残るということだそうです。社協の職員の皆さんは準備もしてきたのに急にはしごを外される形。振り回されて気の毒です。
 私自身も、社協と生活援護課は同じ場所にあったほうがより区民サービスは向上するものと考えていたため、この決断にも大きな残念さが残ります。
 
 
 
 
懸案事項その2・児童館半減計画はそのまま変わらず計画策定の件
 
  話は、子ども文教委員会に戻ります。こちらも区民の声が反映されていない懸案事項がありました。それは「児童館」の件です。ここからは長いです。ご興味ある方はお読みください。
 児童館については、我が会派では議会質問で再考を促してきましたが、区は、現在18館ある児童館を9館(中学校区に1つ)にするという考えは譲らないまま計画を策定してしまいました。
 
 
児童館を削減する区の考え方
 
 区の考え方はこうです。小学校内にキッズ・プラザ(小学生の放課後の居場所で学童クラブと一体的に学校内に設置していくもの)ができるから、小学生の居場所としての児童館利用率は格段に減るため、コスト面を考えて児童館は9館に減らす。その代わり児童館職員を残る館に集約してサービス向上をはかるというのです。
 
 
コストも減らない、地域力も上がらない、欠陥だらけ・将来ビジョンなしの計画に
まの社会的課題は・・・
 
 この考え方は、ひと昔ふた昔前なら良かったかもしれませんが、現在の状況は全く違います。
 たとえば、核家族が増加、共働き家庭が増加、ひとり親家庭増加、不登校児童増加、虐待通報数激増、孤立孤独な家庭が増加しています。こういった社会的課題に対応していくためには「地域の力」を大きくしていかなければなりません。子どもの地域包括ケアを構築し、小さくても良いので地域の子育てを応援する活動拠点が沢山あり、親子の育ちを支える人達の裾野を広げ育てていくことが重要です。
 
コストを考えるなら・・・
 
 さらにコスト面を考えるなら、児童館のコストは大半が職員の人件費なのです。そこに切り込まず、施設を削って職員を集約するということは、ほぼコストダウンにはなりません。
施設だけを削るのではなくて、人件費や職員の配置についても構造改革のなかでもっと効率的な方法を考えられるはずと思っています。
 ぜひ児童館職員には、児童館にも一部残って連携をしていきつつ、来年度いよいよ中野区に移管される児童相談所など、職員にしかできない分野で今まで以上の力を発揮していただきたいと考えます。
 そして児童館には、中野区の区民活動センターのように地域力で運営をしていく部分を多くしたほうが地域にとっても子どもたちにとっても良い方法ではないか、そしてその方法なら児童館全体のコストもかなり下がるはずです。
 
国費も入れられる
 
 さらには、これも私が提案をしてきましたが、実は、他区の事例にもあるような児童館での「利用者支援事業※(国の補助)」が現在は使われていません。(現在児童館で国費を入れているのは「地域子育拠点事業」のみです)
 このような国の補助をなるべく入れていくことで、サービスを低下せずに拠点を維持していくことも考えていただきたい、と訴えてきました。
 
 
※(令和3年第1回定例会予算特別委員会・甲田ゆり子質問より)
※利用者支援事業については、各自治体で活用施設は様々で、基本型、特定型、母子保健型の3つの事業類型があります。中野区では現在すこやかの4施設で基本型と母子保健型、区の子ども総合相談窓口のいわゆる保育コンシェルジュで特定型を設置しておりますが、これを新たな児童館でも行うことで地域包括ケアシステムの拠点となり得るのではないでしょうか。
 
 ともかく、地域の力をこれ以上なくさないでほしい。中野区は地域支えあい先進の区だったはずなのです。
 
 
今回 "なくなる児童館" とされているのは
 
 今回の計画で閉館となる児童館は弥生児童館(2021年度)、鷺宮児童館、西中野児童館(2023年度)、みなみ児童館(2024年度)、文園児童館(2027年度)で、2022年4月から学童クラブ館となるのが朝日ヶ丘児童館、新井薬師児童館、大和西児童館です。
 
 
 
地域の方たちの声は
 
 地域の方々は、児童館がなくなることは地域の子育て応援に頑張ってきた人達のパワーも落ちるし、学校内のキッズプラザだけでは足りない部分をカバーできないと嘆いています。そして区は、子育て先進区としながら、どのような子育て第一のの地域づくりをしようとしているのかが見えない、との声があります。
 
 
 
整合性がとれていない
 
大和西児童館では議会に陳情も出されています。この陳情の趣旨は、区の計画には反対しないがと言いつつも、内容は「児童館機能、子どもたちの居場所機能は残してほしい。小学生も中・高生も乳幼児親子が常に気軽に遊びに来られるよう職員が見守りをしてほしい」等と、結局中身は児童館のまま残してほしいという内容になっています。学童館になる施設でこれを対応するのであれば、児童館を廃止する意味も必要もなくなります。また、この地域だけでなく他の閉館地域との整合性も取れない状況です。
 区は、それぞれ地域のニーズに応じて学童館になった後もできる限り応じるという姿勢を見せていて、他の地域も要望があれば個々のニーズに応じて対応する、と言い切り、計画自体に反対させないように躍起なのです。
 
構造改革も伴わない
  
 「構造改革実行プログラム」なるものを打ち上げ、委員会では、「3年間の構造改革の中で児童館の民間委託も検討していく」との答弁もありましたが、再度私が一般質問で質したところ、区長から、「3年後にすぐ委託をするとは考えていません」との答弁がありました。改革プログラムの中で検討もしていないのに、そこまで言ってしまうというのは何を根拠にしているのかがわかりません。結局、構造改革は先延ばしであり、将来財政についてきちんと考えているとは言い難いという姿勢が見られました。

  

子どもの地域包括ケアの将来像はどこに
 
 結局、根本的には区民の声、地域の声を聞かないばかりか、それをきちんと説明する将来像もみえません。
新たな機能を備えた児童館は、「子どもの地域包括ケアに資する拠点とする」との方向性を打ち出しておきながら、驚くことに、子どもの包括ケア体制そのものを構築する部署すら決まっていなく、体系化もされていない状況です。
児童館が時代に合った新たな機能を備えた児童館になることはよいことですが、子どもの虐待が地域で見過ごされていたり、どうしてよいか手をこまねいている方も多いという声があります。やっぱり早急に地域の包括ケア体制を整えなければなりません。児童館はその中心拠点として大いに利用できるようにしていかなければなりません。
 
 重点プロジェクトとしている、「子育て先進区」と「すべての人への地域包括ケアシステム」に照らしても、お粗末な話です。
 
  
そもそも児童館は全廃だった?
 
 「そもそも中野区の児童館は、キッズ・プラザができたらすべて廃止していくことになっていたでしょう。だから少しでも残るんだからいいんだ。」という人がいます。
 ここに対しては、異論があります。
 
 まず、公明党議員団は、児童館全廃は認めていませんでした。ひと昔前、ふた昔前は、そのような議論があったのかもしれません。しかし、少なくとも私が議員になり、3年目に子ども文教委員会を経験させていただいた以降、U18プラザの廃止に伴い、多くの地域の方の声を聴かせていただきました。そこで、やはり子育て第一の地域づくり・まちづくりが大事と痛感。当時、田中区長にも何度も話をさせていただきました。
 
 財政改革を中心に成果を上げた田中区政では、妊娠期から切れ目ない子育て支援として、全国でも先進的な産前産後ケア事業・産後サポート事業もスタートさせました。財政も立て直すことができ、いよいよこれから「子育て第一の地域づくり」と掲げ、私たちの訴えである「児童館廃止は立ち止まり、すべて地域の子ども子育て施設として機能充実をはかる」ことについて前向きな答弁をしたのです。(なので今回の計画はこの時点からみると「後退」ともみることができます)
 
 このように、それまでの計画がどうであれ、時代状況に合わせ、財政の裏付けをもって区民に説明をしながらサービス向上をしていくことが大切です。今、コロナの影響で財政が厳しいことには変わりありませんが、だからこそ、構造改革をしていくと言っているのではないでしょうか。
 
 
私たちにできること
 
 いま、私たち議員にできることは何でしょうか。
 実は、計画については、議員が採決できない(ジャッジする場面がない)のです。
  このことが分かっていたので、基本計画の上位にあたる「基本構想」には反対したのです。(中野区基本構想は賛成21人・反対20人で可決しました)
  基本構想、基本計画ではもちろん部分的には賛成で前に進めたいこともたくさんあります。中野区の職員が区民のために頑張ってくださっていることを応援したい気持ちでいっぱいです。
 しかしながら、区の将来のため、大きな変更の時に方向性をひとつ誤れば、もう後戻りはできなくなります。
 議員は、議会でしっかりと議論を続けて区に質していくことができます。今後もこの事は言い続けていきたいと思っています。
 ぜひ皆様のご意見をお聞かせください。

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