本日は、中野区の産後ケアについてご紹介します。

産後ケア事業は、私が区議会議員として一期目の10年以上前から取り組んできた政策です。「中野区の産後ケア政策では公明党( 甲田ゆり子)の右に出るものはいない」ーそう言われてもおかしくないくらいの自負を持っています。

少し長くなりますが、お時間ある時にぜひお読みください。

そもそも産後ケアってなに?

産後ケアとは、出産まもないママの心身をケアすること。助産師などが家事や育児をママに代わって行います。宿泊型や日帰り型、訪問型などの産後ケアは、中野区がモデル地域となって2015年から実施され、その後全国に広がっていきました。

参照: 中野区ホームページ

中野区の産後ケア事業

0歳児の虐待が一番多いという事実

その当時学んだデータによると、実母からの虐待が0歳児において最も多いそうです。

 

▲引用:読売新聞オンライン

通常、出産後5日ほどで退院しますが、母体の回復には23週間かかると言われています。生まれて間もない赤ちゃんと帰宅したあとは、体が回復しないまま、家事と赤ちゃんのお世話が待っているのです。

ただでさえ、仕事や不妊治療による出産の高齢化、近隣関係の希薄化により現代の育児は孤独。

議員になって子育てに悩む声を伺う中で、これらが孤立感や産後うつのリスクを増加させ、育児放棄や児童虐待へつながっていくことを知りました。

子どもは02歳の時期に親から受ける愛情が自己肯定感に大きな影響を与えることが脳科学的にも証明されています。

お母さんと子どもたちのために、まずは「一番大変な妊娠出産期の環境を改善したい」と心から思いました。

解決のヒントがあった助産院や産後ケアセンター

中野区の「松が丘助産院」では、お産だけでなく、宿泊やデイケアなど、お母さんに必要なな産後ケアサービスを幅広く提供していました。

 

引用: 松が丘助産院の産後ケア (matsugaoka-sango.com)

産後ケアサービスを利用した方々から、「本当に救われた」という声を直接聞くことができました。

子どもを抱きながら、「ここに来ていなかったら、気が狂っていた。どうなっていたか分からない。」と言うお母さんにも出会いました。

「産後ケア」というものが、いかに重要で命を救う役割を果たしているかを実感しました。

引用:しらさぎふれあい助産院(産後のショートステイ)

高額な産後ケアを誰でも使えるようにできないか

2014年、私は妹が出産した時に、産後ケアサービスを利用するためのお金をプレゼントをしました。ショートステイ6日分と産後ドゥーラ数回分のサービス料金分・21万円です。私自身の勉強代と出産祝いを兼ねてと思い、一人しかいないきょうだいのために奮発しました。

幼ない上の子がいながら家事・育児をすることはできない状況でもあった妹にとって、このショートステイは本当に助けになったそうです。

その当時はすべて自費だったため、例えばショートステイの金額は1泊2日で6万円。産後ドゥーラは1時間あたり約3千円ほどでした。

当然ですが、こんな高額なサービスは受けられる人が限られてしまいます。

また、産後直後は「産後うつ」のリスクが誰にでもあります。行政の補助によって、みんなが産後ケアを受けられるようにする必要があると痛感し、2013年から議会で何度となく訴えるようになりました。

その結果、中野区の子育て支援課(当時)が動き出し、妊娠・出産・産後の時系列で区の支援メニューを整理したところ、出産直後のハイリスクな時期に「支援の切れ目」を発見。改善が急務であることが浮き彫りとなりました。

行政が提供する「産後ケア」構築へ!

行政が提供する産後ケア支援のネックは財源でした。国や東京都からの予算措置がなければ構築が難しいレベルのものだったのです。

そこで2014年、私たち公明党の提案により、中野区議会から「産後ケア体制の支援強化を求める意見書」を国に提出しました。

また、女性国会議員と都議会議員に中野区の松が丘助産院へ視察に来てもらいました。そこで、政府に提出した「女性の元気応援プラン」の中に産後ケアの必要性を盛り込むよう提案。

これら一連の動きが功を奏し、いよいよ国で「妊娠・出産包括支援モデル事業」が始まりました。国と地方が連携して行うことで、産後ケア普及の後押しになりました。

 

▲2014年4月
中野区にある松が丘助産院にて国会議員、都議会議員とともに、「産後ケア」についてヒアリング調査
写真:右から2人目:松が丘助産院・宗祥子院長(ドゥーラ協会代表理事)
甲田ゆり子は左から2人目。

愕然!なかなか浸透しない産後ケア…

2015年10月、ついに、全国に先駆けて中野区に「産後ケア」事業が立ち上がりました。

中野区の産後ケア事業は、はじめから、①産後ドゥーラを活用した家事育児支援ヘルパー、②ショートステイや③デイケアという3つのサービスが揃っていました。

これはとても奇跡的な出来事で、他の地域からは「なぜこんな事ができたの?」と驚かれるほどでした。

とはいえ、初期段階ではわずかな資源からスタートしました。そのため、妊婦面談の際に「支援が必要な人」と認めた人にだけ案内し、産後ケアは使える人が限定的でした。また、妊婦面接のときには産後の大変さを想像できない人や、面談の説明を覚えていない人もいて、結局、産後ケアを利用せずに通り過ぎてしまう人達が多くいることが分かりました。

 一方で、利用できた方の声としては、「使いたい時にすぐ使えるようにしてほしい」「利用上限をすぐに使いきってしまい少ないと感じる」、「利用できる施設の拡大を望む」などが挙がりました。潜在的なニーズが高かったことを実感しました。

▲かんがるー面接時のイメージ(出典:2015年当時の中野区ホームページより)

国も法改正!1歳までの産後ケアの提供を努力義務へ

その後、説明方法や周知の改善、受け皿の拡充が必要ではないかと何度も何度も訴えていきました。
多胎児や早産の場合の利用拡大も粘り強く訴え、実現。

同時に、国会では公明党の竹谷とし子参議院議員などが総理大臣や厚生労働大臣に対して、産後ケアと産後ドゥーラに関する質問を行いました。その結果、2016年に「産後ケア法(母子保健法の一部改正)」が成立。この法律では、産後1歳になるまでの「産後ケア事業」を、母子保健法上に位置づけると共に、全ての各市町村に対して「産後ケア事業」の実施を努力義務化しました。

私はこれを受け、希望する妊産婦全員が産後ケアを受けることができるよう、当時の高木美智代厚生労働副大臣に陳情を持って行ったり、中野区にも事業の改善を働きかけました。

そしてついに、中野区では2022年、「妊婦全員」に産後ケアカードが配られ、「希望するときに」産後ケアが受けられる体制となりました。

中野区で出産すると計22万円の補助が…!

2022年(補正予算)には、国も妊娠期からの子育て支援「伴走型相談支援」に大きく予算をつけました。実はこれは、中野区が行ってきた「トータルケア事業」がモデルになっています。

これにより、中野区にお住まいの方は、出産前後に計22万円分の支援(クーポン券)が受けられるようになりました。

1歳からのサービスの切れ目をなくすことにも

産後ケアは1歳になるまでの事業のため、1歳を過ぎるとまた「切れ目」が生じます。まだまだその後の子育て支援も拡充しなければならず、課題は山積みです。

3年ほど前、1歳児のママのお母様より、「娘が産後うつから立ち直れず苦しんでいる。夜になると死にたくなると。遠方から支援に来ているが限界です。助けてほしい。」との相談を受けました。この相談をきっかけに、「在宅家庭でも利用できるベビーシッター利用支援事業」が必要であると粘り強く提案し、実現にいたりました。

この事業は大変好評で、始まってみると予算が大幅に不足し、年度途中で補正予算を組むほど成果が出ています。(※この時のエピソードは後日別記事とします)

10年「産後ケア」に奔走した私のこれから

母子の愛着形成と健やかな子育て環境の確立のためには、お金の支援だけでなく、お母さんの心身ケアと家事・育児のサポートが重要です。

実は、この取り組みが将来、家庭や社会に与える影響はとても大きく、このことが必ず少子化対策の重要な要素となることを確信して取り組んでいます。

現代の孤独な育児をしているママを救うため、さらに取り組まなければなりません。

これらは現場を歩くなかで寄せてくださる相談者の思いに共感し、伴走することから見えてくる課題です。

私・甲田ゆり子は、一番困っている人たちのためにとの思いで、これからも挑戦を続けていきます。

  

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