私は、多様な方たちと共に育む文化・芸術の意義を強く感じ、その支援を進めています。中でも「アール・ブリュット」は、特にメッセージ性のある素晴らしい芸術だと感じています。
2010年に、私は初めてアール・ブリュットに出逢いました。
以来、今年5月にオープンした新庁舎にアール・ブリュット作品を常設展示できるまでの取り組みをご紹介します。
アール・ブリュットとは?
アール・ブリュットとは、「生(き)の芸術」と意味するフランス語で、フランス画家のジャンデ・ビュッフェが発案した言葉です。
古来、美術というものは、高尚でアカデミックなもの、専門的に技法を習って造るもの、という社会風土がありました。
そのような中で、美術の専門教育を受けていない方が創る加工されていない作品が、独自性が高くありのままを表現して素晴らしいと評価され、「アール・ブリュット」と言われるようになりました。
作家は、いわゆる知的障がいのある方も多いですが、そうではない作家さんもいらっしゃいます。
日本のアール・ブリュットは、2012年4月から3年半にわたって行われた「アール・ブリュットヨーロッパ巡回展」により、海外でも人気が出始めました。
アール・ブリュットが伝えたいメッセージ
アール・ブリュット作品の作家は、「人の評価」や表彰されること、ましてや「儲け」などには目もくれずに、黙々と創造していきます。
ありのままに、魂からほとばしる表現、豊かな発想から創られる作品は、さまざまな人の“生きざま”を教えてくれます。
その意味で、多様な人の息づかいを感じ、いろいろな人たちをつないでいくことができる、価値ある芸術であると感じています。
中野区内でのアール・ブリュットのあゆみ
素晴らしい芸術なら美術館で展示すれば良いと思われるかもしれませんが、中野区には公共の美術館がありません。
そこで、中野では2010年から主に商店街が一緒になって、アール・ブリュットの魅力を広めてきました。
NAKANO街中まるごと美術館実行委員会を作り、年に一度、各商店街が同時展示するなどの取り組みが中野区の特色として有名になっています。
参照:NAKANO 街中まるごと美術館についてのホームページ
中野区とアール・ブリュットとの共通点
中野区は、本当に多様な人が多く住まわれているエリアです。また、「人権及び多様性を尊重するまちづくり条例」(2022年4月施行)を策定した区でもあります。
アール・ブリュットは、他者を尊敬・尊重する真の多様性を教えてくれる貴重な芸術であり、まさに“中野の宝”であると考えています。
甲田ゆり子が働きかけてきたこと
私は2011年の初当選以来、中野におけるアール・ブリュットの振興について、積極的に推進し、議会質問も重ねてきました。
2022年(令和4年) 11月には、新庁舎や中野駅周辺まちづくりでのアール・ブリュットの展示活用について、一般質問に取り上げました。
その中で、社会福祉法人愛成会副理事長でありアートディレクターでもある小林瑞恵さんの著書を紹介。
「アール・ブリュットの世界は、私たち一人ひとりが誰とも代えがたいオリジナルでユニークな存在であることの価値を伝え、この世界の形を再創造してくれます」との一文も紹介しました。
引用:「アール・ブリュット 湧き上がる衝動の芸術」小林瑞恵 著
このとき、区長は「アール・ブリュットの活用を推進し、区民の多様性への理解を深めるための取り組みを支援する」と答弁。さらに、「新庁舎1階に区民が集うイベントスペースやロビーに、アール・ブリュットなどの展示や催しができるよう整備していきたい(主旨)」との答弁も引き出しました。
中野区役所での常設展示がスタート
そしてついに、2024年5月にオープンした中野区役所・新庁舎の1階イベントスペースおよび会議室に、アール・ブリュット作品が常設展示されました。区民を初め、区外より視察に来られた方々にも大好評です。
区役所庁舎にあるということで、美術館にわざわざ見に行かなくても、日常の中で、“気づき”を与えてくれる利点があります。
また、会議室に絵があることで、重たい内容の話し合いにも明るく爽やかな雰囲気づくりに役立つことでしょう。
今後もさらに展開を
まちの中にもマッチした素敵な絵があることで、“躍動感”や“癒し”につながることもあると思います。現在は、教科書などにアール・ブリュットが使われるなど、子どもたちの教育現場でも活用されています。
アール・ブリュットを通じた文化芸術の振興は、これからも中野のまちづくりにおいて重要な役割を果たしていくと思います。今後もさらに文化交流を促進するための取り組みに力を入れてまいります。
▼アール・ブリュットNAKANOのSNSを以下にご紹介します。ぜひご覧ください。