10月7日の本会議にて、令和6年度中野区一般会計の決算に賛成の討論を行いました。

決算討論の全文は以下の通りです。
上程中の認定第1号・令和6年度中野区一般会計歳入歳出決算の認定について、公明党議員団の立場で賛成討論を行います。 

令和6年度は、新型インフルエンザ等感染症が同年5月から5類感染症へと移行し、長く続いたコロナ禍から本格的に日常活動が戻った年でもあり、また同じ5月から区役所新庁舎が開庁した年でもありました。 

令和6年度の一般会計歳入決算総額は、前年度比7.1%減の1,8947,100万円余、歳出決算総額は前年度比6.8%減の1,852億5,300万円余円となり、形式収支額は421,700万円余、実質収支額は323,800万円余となりました。また、単年度収支は、 △24800万円余と2期連続の赤字となっています。 

財政指標でみると、実質収支比率は3.5%と特別区平均を大きく下回り、経常収支比率は前年度比10.1%増の81.3%、公債費負担比率は6.0%と前年度から減少したものの、いずれも特別区平均を大きく上回りました。

また財政力指数も0.49と特別区平均を下回った状態が続いています。これらの指標からは、財政には余裕があるものの、他区と比して経常経費や公債費の増加による影響が見て取れます。 

歳入をみると、基幹収入である特別区税は382億円で前年度比0.7%減でしたが、特別定額減税の影響を踏まえると、実質は昨年度より増額しています。

増加の要因は納税義務者数、納税者一人当たりの所得額の伸びが大きいことによります。令和3年度以降99%を超える徴収率を維持し微増させてきた努力の影響もあります。また、特別区交付金は過去最多であった前年度と比べると2.2%減の463億円でありますが、基幹収入においては、いずれも好調な状態が続いています。 

歳出においては、令和6年度決算には、わが会派からの要望が多く実現されました。

具体的には、

・物価高騰対策給付金での令和5年度に引き続いた低所得世帯への区独自の上乗せ実施、

・区内コンビニエンスストアへのAED設置、

・がん患者へのアピアランスケア、

・ベビーシッター事業の未就学児までの拡充、

・医療的ケア児への支援体制の充実、

・本郷小学校、鷺の杜小学校通学路の安全対策、

・非木造住宅耐震改修等事業助成の実施、

・再エネ・省エネ機器のニーズに応えた補正予算の対応

 

など、区民の命と生活、安全・安心なまちづくりに寄与する施策の推進については、評価致します。

特に、6年度から東京都が補助するとしている、

・公立小中学校の給食無償化や、

・包括補助から個別補助に見直された高齢者補聴器助成

など、都議会公明党と連携して進めてきた事業の実施は、高く評価します。

 

一方、事業執行にあたっては、多くの課題が見られました。

物価高騰対策について、「本来国や都が行うべきもの」としたうえで、十分なヒアリングのもと区として行う対策は講じているとのスタンスでしたが、特に補助金・助成金について十分とは言い難い実態が見られました。

現下の状況を勘案すれば、年度途中の補正予算で対応すべきものもあったと思われます。

令和8年度予算においては、これまでの状況を踏まえた適切な対応を求めます。

令和6年度予算の執行にあたっては、異例ともいえる5つの意見が付されました。

私立学校等保護者への給食費相当額を現金給付、受動喫煙対策の全庁的な施策の推進については議会の意思を尊重し進めたこと、庁舎移転廃棄物の、リサイクルと経費節減も、必ずしも議会の求めとは一致しないまでも、できうる限りの対策を講じたこと、これらについては評価いたします。 

しかし、経常経費の増大抑制のための事業の抜本的な見直し・廃止は到底充分とは言えず、生成AIの導入での効果検証と段階的な導入は、結果として検証がないままの拡大は免れたものの、未だ十分な検証がありません。議会が付す意見の重みについて認識を改めることを求めます。 

会計処理にもコンプライアンスの欠如といえるものがありました。歳入において新庁舎整備に係るとの負担金の中で、東京都防災行政無線整備工事に係る都負担金5,585万円余が、当初予算編成時から把握していたにもかかわらず計上がなされず、その後の補正予算による歳入処理も行われなかったことが判明しました。地方自治法210条及び地方財政法3条の2に照らし、適切とは言い難い会計処理です。

また、歳出では総務費中会計費で、総務費から496万円が流用されています。内訳は会計室の人件費に約466万円、公金取扱手数料に約30万円ですが、分科会では公金取扱手数料の不足額約30万は会計質の人件費からの流用との答弁でした。しかし流用には手数料分の額も含まれていることから、著しく適正さを欠く処理と言わざるを得ません。人件費からの流用は現に慎むべきです。法令順守による厳格な会計処理を強く求めます。 

契約事務においても、議会や区民への説明と異なるものが見られました。中野二丁目再開発権利床活用において、地域情報交流スペースの活用が進まないことへの懸念も議論されました。その中で議会や区民に公表した募集要項にある「地域情報交流スペースの管理運営状況によっては、減額割合の見直しや廃止を行う」との要件が事業者と結んだ契約では外されていることが明らかになりました。 

また、新庁舎でのフロアマネージャーの在り方については、フロアマネージャー業務委託は、庁舎移転の令和65月以降、旧庁舎より約2億円近い経費の増で運用されており、多くの委員から質疑があったところですが、昨年6月のわが会派のフロアマネージャーについての質問に、区は、「年間を通じた各階の来客状況を踏まえ、業務量に応じた適切な配置となるよう最適化を図る」としながらも、今回の区民分科会における質疑で、実質5年間の契約期間は人数の最適化が図れないことが分かりました。

契約にあたり、当初、議会や区民に示した内容に変更が生じる場合には、契約締結前に改めて理解を求めるべきで、説明と異なる契約行為は執行機関としてあってはならないものです。

 新庁舎については監査委員からも、維持管理やDXツールや、サービス拡充等の運営経費の増加への懸念が示され、具体的な数値を示した評価や利用者側の声を聴くなどの効果検証を求められています。我々のもとにも、区民や事業者から「共通窓口が身近でなくなった」との声が寄せられ、課題が指摘されています。

初年度は余裕を持った体制と理解しますが、今後は業務分析を徹底すべきです。答弁では令和8年度に実施予定とのことですが、共通窓口化やセルフ機器導入により削減された業務の活用状況や人員削減効果を含めた新庁舎移転に伴う効果検証について、区民や議会へ具体的なの報告を強く求めます。 

 令和6年度には、まちづくりや施設整備における大きな区の方針転換がありました。

いわゆる区役所サンプラザ跡地における再開発と、旧商工会館跡地の活用についてです。長年にわたり議論を積み重ね進めてきた中野駅周辺まちづくりの、最重要エリアの施設等の在り方について、区長は区民の声が聞かれていないとし、当初スケジュールを延期し現在の再整備事業計画を策定し、事業者選定を行い進めました。しかし、昨今の物価高騰の影響も大きく、昨年10月には一旦中断し事業者からの再提案を待ったものの今年3月には計画の白紙の意思を決定する事態となりました。

前区政において売却予定であった旧商工会館は、区長が「区民の財産である公共用地の安易な売却計画」を止めるとし、当初は民間活力の活用により産業振興センターにある機能の移転を目指したものが、昨年10月に突如、中高生年代向け拠点施設を含めた複合交流拠点を早期に整備する必要があるとの理由で、同敷地に中高生の交流・活動支援の場を含めた複合交流拠点の整備へと方針転換しました。しかし結局新たに求めた機能の整備では民間の力を得られず、早期に必要とされた中高生の交流・活動支援の場の整備は大きく遅れることとなりました。 

酒井区政となり転換した計画がいずれもスケジュールから大幅に遅れる結果となったこと、またその間の本来必要でない歳出の発生と区民への便益提供が遅れることについては重く受け止め、一連の総括を区民に公表すべき事案であると申し上げます。 

区役所サンプラザ跡地における再開発が令和6年度にとん挫した影響は大きく400億円と見込まれる転出保証金は、いまだ確定しておらず、資金計画は不透明なままです。結果、新庁舎の建設費は財政調整基金と起債に頼らざるを得ず、最も懸念していた起債依存度が高まっています。 

最後に、今後の財政運営にあたり監査委員の意見を今一度確認します。

「令和6年度における基金積立は、財政規律として定めた「財政運営の考え方(令和4年8月)」による基金積立目標額が当初予算では計上されず、決算剰余金を活用して対応が図られた状況であった。財政規律は持続可能な財政運営の根幹を成すものであり、当初予算編成段階において遵守する必要があることから、計画的な財政運営に注力されたい。」

とあります。

今年度見直した当区の財政規律の柱は、既存施設の減価償却をベースとした予算編成時の基金積み立てのみです。 

これまで何度も減価償却ベースでは必要な十分な基金積み立てとならないことは申し上げてきましたが、その上で状況により定めた規律が守れない事態が発生した事実を重く受け止めるべきです。 

予算で叶わなかったことは決算時に帳尻を合わせればとの考えでは、経常経費は高まる一方であり、いかなる状況となろうとも、決めた額を基金に積み立てたうえで予算編成を行ってこそ、初めて規律が守られた状態となります。 

今後の区有施設整備計画の改定については慎重な議論が必要であり、その内容いかんによっては、さらなる基金の積み立てを行うべきです。

 また、特に学校施設整備計画の改定においては、大切な子どもたちの教育環境の格差是正こそ最優先課題であり、課題解決のために必要な財政計画はいかなるものかをしかりと議論すべきと考えます。 

真に子育て先進区を目指すのであれば、保護者への支援のみならず、子どもたちの未来への直接投資である教育にこそ、区の資源を最優先に投資すべきであることを強く申し上げ、賛成の討論といたします。

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